2019年10月4日に公開されてから、かなりの話題を呼んでいる映画『ジョーカー』。
公開から2ヶ月半の12月15日でどうやら興行収入50億円を突破したそうです。
さらに第76回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀作品賞にあたる金獅子賞を受賞し、アカデミー賞の呼び声も高まっています。
あまりにも人気なので今更ながら見に行ってきました。
なんかこういったダークな雰囲気の映画は好きではなくて興味なかったのですが、見てみるとかなり惹きこまれました。
謎もいくつかあり考察するポイントもありますし、何よりおもしろい。
この記事は映画『ジョーカー』のネタバレ感想です。
映画『ジョーカー』のネタバレあらすじ
ネタバレありなのでまだ見てない方はご注意ください。
アーサーとは?

コメディアンを目指すアーサーは大道芸人の派遣会社でピエロをしたりして働いていた。
アーサーは自分の意思と関係なく笑ってしまう病気を持っていて、福祉センターで薬をもらいながらカウンセリングを受けていた。
家では母親のペニーの介護をしながら暮らしている。
昔、ペニーはウェイン家の家政婦として働いていた。
自分たちを助けてもらえるようにトーマス・ウェインに手紙を送っているが「トーマス・ウェインから手紙の返事がない。」といつも返事を待っている。
そんな母とアーサーはマーレイ・フランクリン・ショーというテレビ番組を見るのが好きだった。
いつかマレーが自分を舞台に呼ぶことを妄想しながら・・
仕事をクビになるアーサー
先日アーサーは道端で大道芸をしていると子ども達の集団に看板を取られて取り返そうとするが暴行をうける。
しかもその看板は会社のもので事務所の社長から「給料から差し引いておくからな!」と言われてしまう。
襲われたこともあり同僚のランドールから「自分の身を守るために銃を持っておけ。」と言われ拳銃をもらうアーサー。
アパートに帰りエレベーターに乗るとソフィーという女性と子どもと一緒になり、話かけられたことによりアーサーはソフィーに好意を寄せるようになる。
アーサーは病院の小児病棟でピエロの仕事をしている時に拳銃を落としてしまう。
そのことが問題になり社長に言い訳をするアーサーだがランドールが全てアーサーのせいにするのだった。
そしてアーサーは仕事をクビにされてしまう。
地下鉄3人殺人事件を起こす

帰宅途中の電車の中で女性がウェイン・インダストリーで働く3人のサラリーマンに絡まれていた。
その付近に座っていたアーサーは発作の影響で笑ってしまう。
その3人はそんなアーサーを見て「何がおかしいんだ。」とひどい暴行を始める。
すると暴行を受けたアーサーはとっさに持っていた拳銃を撃ち2人を殺してしまう。
1人は足を撃たれたが逃げようとする。
しかし、アーサーは追いかけて3人目も射殺する。
アーサーは走って逃げるが、人を殺したことで高揚感に満たされていて、そのままソフィーの家にいき突然キスをする。
アーサーはトーマス・ウェインの息子?
アーサーのコメディの舞台にソフィーが見にきている。
舞台が終わり一緒に道を歩いているとアーサーが起こした地下鉄殺人事件の犯人が殺人ピエロと呼ばれて、貧困層に支持され始めていた。
ソフィーは殺人ピエロのことをヒーローと呼び、そのことに気分を良くするアーサー。
アーサーは自宅で母がトーマス・ウェインに送っている手紙の内容を読んでしまう。
その中にはアーサーがトーマス・ウェインの子どもであることが書かれている。
本当なのかどうかを母に問い詰めると「身分の違いがあり世間の目があるからもう会わない方がいいと言われ会わない契約書も書いた。」と言われる。
アーサーは父であるトーマスに会いにウェイン家に行くが、執事に事実無根だと一蹴されてしまう。
マーレイ・フランクリン・ショーの出演依頼を受ける

母ペニーが倒れ救急車で運ばれ入院することになる。
アーサーは母の病室に行き、そこでマーレイ・フランクリン・ショーを見ると自分のビデオが流されている。
マーレイはアーサーをジョーカーと呼び笑いものにし始める。
後日アーサーのところにマーレイ・フランクリンショーの番組から出演依頼の電話がかかってくる。
どうやら番組で流したアーサーのビデオがすごい反響を呼んだそうだ。
アーサーは番組に出ることを承知する。
トーマス・ウェインに真実を教えられる
ピエロの集団抗議デモはどんどん激しくなっている。
特にトーマス・ウェインのいる会場の前では特にデモが激しい。
このピエロのデモに紛れて会場に侵入するアーサー。
そこでトーマス・ウェインと対面し、自分のことを知ってもらおうとする。
しかし、ウェインは「母から本当のことを聞いていないのか?」と言われ、母ペニーは妄想障害で収容所にも収容されていて、しかもアーサーは養子だったそうだ。
アーサーは信じず「あなたは僕の父親だ!」と言い張るがパンチをされ「二度と息子に近づくな。」と言われてしまう。
アーサーは母親の真実を確かめるためにアーサム収容所に行く。
その結果、母ペニーは妄想障害などがあり自分が養子であることも本当だった。
さらにアーサーの笑ってしまう症状はペニーの元恋人による虐待が原因であるものということも書かれていた。
アーサーはどんどん殺人を犯していく
ショックを受けたアーサーはソフィーの家を訪ねるがソフィーは驚いて恐怖する。
「あなたアーサーよね?部屋を間違えているわ。お願いだから出て行って。」
そう。今までのソフィーとの時間は全てアーサーの妄想だったのだ。
母に裏切られたことを知ったアーサーは母を窒息死させる。
さらに母が死んだことで心配しにきてくれたランドールもハサミで刺殺する。
マーレイ・フランクリン・ショーの出演のために出かけるアーサーを警察官2人が追いかけにくるが、アーサーはピエロがたくさん乗った電車の中に逃げ込む。
そこに警察官が追ってくるが電車に乗っているピエロが邪魔をしてくるので警察官はつい発砲してしまう。乗客の1人が撃たれてしまい、警察官2人は襲われてしまう。
アーサーは夢であったマーレイ・フランクリン・ショーに出演するが、マーレイはアーサーを笑いものにしている。
するとアーサーは地下鉄3人殺人事件の犯人は自分だということを話し始める。
格差社会に対する怒りをぶちまけ、番組中にマーレイを射殺する。
アーサーはジョーカーになる

アーサーは警察に取り押さえらえパトカーで搬送されるが、マーレイ・フランクリン・ショーでのアーサーに共感した街中のピエロたちは激しい暴動を繰り広げていく。
するとピエロの1人が運転する救急車がパトカーにぶつかり、アーサーを救出する。
一方、トーマス・ウェインは妻と息子のブルースと路地から逃げようとするが、ピエロの1人にブルースを残して撃ち殺されてしまう。
救出されたアーサーはピエロの集団に囲まれパトカーのボンネットの上で踊り出す。
精神病院でカウンセリングを受けるアーサー
場面は変わり精神病院でカウンセリングを受けているアーサー。
笑っているアーサーを見て「何を笑ってるの?」と質問するカウンセラー。
「ジョークを思いついた。」「あなたには理解できない。」と言い両親を殺されて路地でたたずむブルースを妄想し、診察を後にする。
血のついた足跡を残しながら脱走をしようとするアーサーで映画は終わる。
映画『ジョーカー』作品情報

バットマンのヴィランであるジョーカーをメインに描いた映画です。
今までにジョーカーは『バットマン(1966)』『バットマン(1989)』『ダークナイト』『スーサイド・スクワッド』の4作品に登場していますが、ジョーカーとして生まれた経緯はうやむやにされてきました。
今作でジョーカーがどのように生まれたのかその経緯が描かれています。
映画『ジョーカー』は第76回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀作品賞にあたる金獅子賞を受賞し、アカデミー賞の有力候補とも言われているのです。
監督とキャスト
【監督】
トッド・フィリップス
【キャスト】
アーサー・フレック / ジョーカー
演:ホアキン・フェニックス
マレー・フランクリン 役
演:ロバート・デ・ニーロ
ソフィー・デュモンド 役
演:ザジー・ビーツ
ペニー・フレック 役
演:フランセス・コンロイ
トーマス・ウェイン 役
演:ブレット・カレン
映画『ジョーカー』の考察&感想
実は僕はさほどジョーカーに興味ありませんでした。
もっと言えばバットマンの映画は見るけどバットマンも好きってわけでもなかったのですが、映画『ジョーカー』はネットも友達からの評価も高すぎたので後乗りで見ることにしました。
これがまたおもしろく惹きつけられる映画でした。
しかもこの映画は様々な意味で捉えることができるような話になっています。見た人によって解釈が違うのではないかな?て思います。
他サイトでいくつかジョーカーのネタバレ考察を読ませていただきましたが、ジョーカーの謎の考察は様々なものがありました。
僕なりに考察と感想もまとめたので紹介していきます。
どのシーンがアーサーの妄想なの?
この映画を見ているとジョーカーことアーサーの妄想シーンがいくつかあります。
(本当は妄想じゃないってこともあり得る。)
- バスの中で子どもを笑わせるシーンは実は子どもがいなかった?
- マーレイ・フランクリン・ショーの観客席に座ってマーレイに呼ばれるシーン。
- ソフィーと一緒に過ごした時間。
- ラストシーンでの精神病院。
マーレイの番組を母と見ているときにまるで回想シーンかのようにマーレイ・フランクリン・ショーの観客席にいているシーンがあります。
実は僕はずっと回想シーンだと思ってました。
そうじゃなくマーレイに認められたいというアーサーの願望を妄想していたんですね。
ソフィーとの時間も妄想。
ソフィーとエレベーターで会ってから以降は全て現実ではなかったのかもしれない。
アーサーがソフィーの家に突然行った時にソフィーが驚き「あなたアーサーよね?部屋を間違えているわよ。お願いだから出て行って。」と遅れながら話しているのを見て、多くの視聴者は「あれ?今までのはなかったの?」とアーサーに疑問を抱き始めるのではないでしょうか。
僕自身ここでアーサーの妄想癖に気づき始めました。(遅すぎ?)
そして、ラストシーンの精神病院。
アーサーはいきなり精神病院でカウンセリングされていて「ジョークを思いついた。」と言っています。
そのあとは両親が死んでいるところにたたずんでいるブルースを想像しています。
自分が現場にいなかったにも関わらず。
このラストシーンの意味するものは『今までの話の全てアーサーの妄想』だったのかもということです。
このことについては次に考察していきます。
ラストシーンが意味していることは全てアーサーの妄想なのか?
このラストシーンの考察は様々なものがありますが、考察の一つに『今までの話の全てアーサーの妄想』というものがあります。
この話自体が全て妄想ということはここではジョーカーは誕生していないということになります。
つまり、今作でジョーカーの誕生秘話が明らかにされると言われていたが、実は明らかにされておらずいつものようにうやむやにされたという結末なのかもしれません。
トッド・フィリップス監督はラストのアーカム州立病院のシーンについては何も明かしませんが、一つ言われているのは、
「あのシーンだけが、彼が唯一純粋に笑っている場面です。」
だということらしいです。
この言葉から考察すると妄想ではないシーンはこのアーカム州立病院のところのみかもしれません。
今までの話はジョーカーの誕生秘話ではなくアーサーの妄想で、このアーカム州立病院のシーンからジョーカーとなり始めたってことになります。
アーサーの血のついた足跡はカウンセラーを殺して抜け出したということでしょう。
しかもその時にダンスを踊っているのは紛れもなくジョーカーのダンスです。
この時からアーサーはジョーカーとなったと考えられます。
アーサーが受けた数々の災難
アーサーは元々は心優しく弱い存在でした。
しかし、いくつかの災難を受けどんどんとジョーカーと変貌していきます。
- 子どもたちに暴行され看板を壊される。
- 壊された看板代を給料から差し引かれる。
- 拳銃をランドールからもらうがランドールはシラを切る。
- 拳銃を持っていたせいで事務所をクビにされる。
- ウェイン社の若者3人に暴行を受ける。
- 母親が妄想癖でアーサーに多くの嘘をついていた。
- 実はアーサーは養子だった。
- 自分の精神疾患が母のせいだった。
- 尊敬するマーレイもアーサーを笑いものにする。
これぐらいかな。
アーサーは養子で母ペニーのもとに来たのが最大の元凶ですね。
ペニーの元カレがアーサーを虐待したことが原因で脳や神経に障害を持ってしまい、社会で生きることが難しくなってしまったのでしょう。
このアーサーの境遇のつらさに共感する人は多いのではないでしょうか?
元々は人も良かったが障害を持っていたというだけで人から蔑まされたり、大切に扱われなかったりして自分の存在を感じることができなかったアーサー。
障害はなくてもこういう経験のある人は今の社会にも多いと思います。
異質な存在であるはずのジョーカーだけど、そうなるのも共感できるというのがこの映画が人気になっていた理由の一つでもある気がします。